高校男子テニスの強豪、東海大菅生(東京)が食事から勝負強さを身につけようとしている。
8月下旬、山中湖での合宿中に、数多くのテニス選手をサポートしてきた管理栄養士・山口美佐さんを講師に招き、栄養講座を受けた。約1時間、1、2年生の新チームに3年生4人も加わり16人が受講。さらに1、2年生は個別面談で自分に必要な栄養素、足りない食品などを指導された。
矢崎監督「指導の集大成に」
チームとして山口さんの講座を受けたのは5年ぶり。体が細く小さかった当時のメンバーは、その後もサポートを受けながら、全国高校総体の団体戦で準優勝するまで成長した。矢崎篤監督(55)は、山口さん主催の会で勉強を続けていたものの、「やりきった感があった」と一区切りをつけていた。
しかし、今年になって心境が変化した。定年まであと5年。振り返れば、高校総体(団体、単、複)、選抜(団体、単)と高体連の全国大会でいずれも決勝に行きながら敗れている。この5年間で、栄養の世界でもさまざまな進化があることも知った。教員生活33年目、東海大菅生のテニス部顧問になって32年目。「指導の集大成としたい」と奮起し、頂点に立つのに足りなかった1ピースを探すため、まずは栄養面を見直すことを決めた。
食事が精神面にも作用する
テーマは「栄養からメンタルにアプローチできるか」。
2年生主体で出場した8月の高校総体では、団体戦で2回戦敗退。準備不足もたたり「すごく緊張してしまって、力を出せなかった。心技体を揃えないと戦えない」(山口凌主将=2年)と、大舞台でネガティブ思考にならないことを課題に挙げる。
矢崎監督は実体験から「食事が精神面にも作用する」が持論。「年齢的なこともあるけど、自分自身、食事を整えることでイライラして怒鳴ることもなくなり、心に余裕ができて生徒の話を聞けるようになった」。もちろん、食事だけでメンタルが強化されるものではない。とはいえ、バランスの良い日々の食事で体を強くし、継続して取り組めたという自信が心も強くすると考えている。
プレーをイメージしながら食べる
この日の講座では、テニスのプレーを具体的にイメージしながら必要な栄養素をすり込んでいった。
例えば、サーブ。
①どこに打とうか考える=糖質
②緊張しないよう集中する=カルシウム
③強く打つ(筋力アップ)=タンパク質
…など。
何のために食べるのか。特にテニスは個人競技。コート内で瞬時の判断が求められる。日頃から目的を持ち、意識して食べることの大切さを学んだ。
校内にコートなく全員自宅生
全国大会常連だが、甲子園に出場した野球部などのように強化指定クラブではない。校内にテニスコートはなく、公営や大学のコートを借りる「ジプシー生活」の毎日だ。生徒は全員自宅生で1時間半~2時間をかけて通学。この環境に、山口さんは「約4時間の練習も激しいものですが、通学の往復を考えると消費エネルギーに、摂取エネルギーが足りていない選手が多いですね。まだまだ体が細いので、しっかり食べて欲しい」とアドバイスする。
狙うは来年3月、全国選抜大会での団体優勝。秋に始まる予選でしっかり力を出せるよう「基本の食事」に取り組んでいく。