アスリート食を給食にも-。東京・中野区で中野区学校栄養士研究会(小中学校に勤務する栄養教諭、学校栄養職員で構成)による給食展示会がこのたび、中野区役所で行われた。今回のテーマは「オリンピック・パラリンピックについて給食からの発信~日本と世界の食文化理解、子どもたちの体力向上に向けて~」。隔年開催の同展示会のために、栄養教諭たちは3チームに分かれて2年がかりで企画、活動してきた結果を報告。実際にアスリートが食べている献立例なども掲示され、子どもたちや区民に分かりやすく、食の大切さを伝えていた。
テーマ1)体力向上と食生活
アスリートの食事と小中学生が食べる食事は、量こそ違えど内容は同じ。いずれも「バランスの良い食事」を摂ることが大切だ。
この展示会では、バランスの良い食事を「元気な体を作る食事・5つの輪」とし、①主食、②主菜、③副菜(1)、④副菜(2)または汁物、⑤牛乳・乳製品の5つの輪に、果物を加えた6品目(群)と表現。
「ただ、出されたものを食べるのではなく、何でこの量を食べるのか、牛乳を飲むのかなど給食に付加価値をつけ、理解させることを意識しています。苦手なものでも一口食べてみようというきっかけになれば」と第三中の栄養教諭・二重作友美さん。日頃から家庭科の授業や保健委員会などと連携し、指導しているという。
このコーナーで展示されていた給食は「骨折・貧血予防給食」「筋力アップ給食」「持久力アップ給食」の3つ。例えば、筋力アップ給食は、筋肉の材料となるタンパク質をしっかり摂取できるよう、主菜の魚だけでなく、ご飯に大豆がプラスされている。野菜や果物も添えてあり、見た目にも満足感が高い。
これらは運動会や持久走大会など学校のスポーツイベント前に提供。子どもたちの食意識向上に努めるとともに、家庭でも同様にバランス良く食べて欲しいとの願いが込められている。
テーマ2)世界の食文化
オリンピック・パラリンピックに出場する国や地域の中から、フランス、メキシコ、トルコ、タイ、韓国の5カ国の料理を給食として出したところ、子どもたちの反応が非常に高かったという。
「聞き慣れないメニュー名もあるので、実際に食材を見せて説明もします。料理からその国への興味も沸くようです」と鷺宮小の学校栄養職員・松本幸子さん。
最も手間がかかったのはフランス料理。手作りバケットを、リンゴのコンフィチュール(ジャム)をつけて食べる。主菜はブルゴーニュ地方の伝統的な家庭料理コック・オー・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮)。副菜にヴィネグレットソースのサラッド(フレンチドレッシングのサラダ)、リヨネーズポテト(リヨン風ポテト)という献立で、メニュー名を聞くだけでも気分が上がりそうだ。
テーマ3)世界の給食と日本の給食
諸外国の給食事情や国連WFP(国際連合世界食糧計画)の「学校給食プログラム」事業、日本の学校給食のねらいや役割、栄養量の説明とともに教育の一環として行われていることを紹介。
さらに「給食室の1日」と題し、衛生面でも細心の注意を払って作っていることを時系列で説明していた。「できて当たり前のことですが、給食がこのように作られていることを少しでも分かってもらえるとうれしい」と南中野中の学校栄養職員・中村友紀さん。
また、給食で人気のカレーライスは、ルーから手作りしている。
「ベースの味付けはありますが、私の学校では児童の食べ具合をみてスパイスをアレンジしています」(平和の森小の学校栄養職員、慈光寺陽子さん)。食べ残しの状況や好みをみながら、学校栄養職員が細かく調整している。【アスレシピ編集部】
◆中野区立の小中学校
平成29年度現在、小学校が23校、中学校が11校の計34校あるが、18校に東京都教職員の栄養教諭や学校栄養職員、16校に栄養業務委託による栄養士が配置され、各学校内で給食を作っている。