<テニス:全米オープン>◇6日(日本時間7日)◇ニューヨーク◇女子シングルス準決勝

キーズとの女子シングルス準決勝で第1セットを奪い、ガッツポーズを見せる大坂(撮影・菅敏)
キーズとの女子シングルス準決勝で第1セットを奪い、ガッツポーズを見せる大坂(撮影・菅敏)

世界19位の大坂なおみ(20=日清食品)が日本女子史上初の4大大会シングルス決勝に進出する快挙を成し遂げた。前年準優勝で同14位のマディソン・キーズ(23=米国)に6-2、6-4で勝ち、日本女子テニス界に金字塔を打ち立てた。決勝では4大大会23度の優勝を誇り、大坂のあこがれの同26位のセリーナ・ウィリアムズ(36=米国)と対戦する。

16年の全米3回戦で、初めてキーズと対戦した。セットを分け合った最終セット。大坂の弾丸ショットが次から次へと入り、キーズは防戦一方。一気に5-1とリードし、自身初の4大大会16強入りは目の前だった。しかし、「勝ちを考えたらパニックになった」と、キーズに追い上げを許した。5オールになった時には、すでにコートで涙を見せていた。逆転負けを喫した悪夢から2年で、そのキーズを破り、成長の証を見せた。

昨年末に、8年間、S・ウィリアムズの専属練習相手を務めたバイン氏をコーチに招いた。そのバイン・コーチから覚えたのが「我慢」だった。強打一辺倒のテニスから安定性も交えたプレーに変身。3月のBNPパリバオープンでツアー初優勝を遂げた。

しかし、「期待ばかりされるようになった」と、重圧を感じ「テニスが楽しくなくなった」。4月には、大会中に心が張り裂けそうになり、試合中に涙を見せた。両親に加え、バイン・コーチ、日本テニス協会の吉川真司代表コーチ、茂木奈津子トレーナーらが、大坂を支えた。その結果、「もうわたしは違う選手になった」と、その苦しさを乗り越えた。

あまり細かいタイプではないが、今回だけは、珍しく縁起を担ぐ。「食べ物は定番が好き。冒険したくない。朝食はいつもサーモン・ベーグルよ。だから、もう500個も食べてる感じなの」。そう話した日は、3回戦で完封勝ち。英語の俗語で、0がベーグルに似ていることから、完封は「ダブル・ベーグル」という。この日は、コート上でもベーグルを焼いた。そして、ベーグルの朝食は、現地時間8日の決勝でも続くことになる。

(2018年9月7日、ニッカンスポーツ・コム掲載)