<全国大学ラグビー選手権:天理大55-28早大>◇決勝◇11日◇国立競技場

天理大が初の大学日本一に輝いた。関西勢としては3連覇した同大以来、36大会ぶりの快挙。天理大の攻撃の中心にいたのが、トンガ出身のCTBシオサイア・フィフィタ(4年)だった。副将を任され、存在感は群を抜いていた。だが、最初から期待されていたわけではない。来日当初は線の細い体形だったという。日本で成長し、日本一に立ったフィフィタのルーツに迫った。

天理大対早大 後半、攻め込む天理大CTBフィフィタ(右)とフランカー松岡(撮影・滝沢徹郎)
天理大対早大 後半、攻め込む天理大CTBフィフィタ(右)とフランカー松岡(撮影・滝沢徹郎)

来日当時、母校の日本航空石川でコーチを務め、今季は就任1年目ながら花園に導いたシアオシ・ナイ監督(31)は、こう振り返る。

「サイア(フィフィタ)が来たときはガリガリでした。身長が181センチぐらいで、他の日本人と比べても細かったですね」

トンガは人口約10万人で、長崎・対馬とほぼ同じ面積の、南太平洋に浮かぶ小さな島だ。経済的な理由もあり、1日2食の家庭も少なくない。

「日本は肉、野菜などバランスよく食べるが、トンガは肉と芋だけ。3食を食べる習慣がないから、体は大きくならない。サイアも(来日後に)先輩から教えられて、食事の大切さを知ったと思う。納豆が好きで、夕食に3つ食べて、部屋にも持って帰っていました」

天理大対早大 前半、相手を引きずり突進する天理大CTBフィフィタ(撮影・野上伸悟)
天理大対早大 前半、相手を引きずり突進する天理大CTBフィフィタ(撮影・野上伸悟)

トンガでは、ラグビーの練習をするのは1年のうち3カ月程度だ。日本で本格的にトレーニングを始め、高校日本代表に選出されるまで成長した。チーム練習が終わっても自主練をこなし、高みを目指した。そこには譲れない思いがあったからだ。

トンガ人指揮官は、自慢の教え子の気持ちを代弁する。

「日本に行って、大学、社会人に進んで、お金をためて親に送る。トンガと日本の差はすごくある。『家族のために』というのが先にくるので、しんどくても頑張れる。それが、トンガ人のレガシーですね」

天理大対早大 表彰式で■(■は寛の目の右下に「、」)仁親王杯を見つめる天理大CTBフィフィタ(中央)(撮影・滝沢徹郎)
天理大対早大 表彰式で■(■は寛の目の右下に「、」)仁親王杯を見つめる天理大CTBフィフィタ(中央)(撮影・滝沢徹郎)

今季、同校が花園に出場した際、天理大のグラウンドを借りた。OBが指導に訪れ、フィフィタもいたという。

「(成長していて)びっくりした。試合後のインタビューもしっかりしていて、キャプテンらしかった」

来日当初から期待されていたわけではない。日本で努力を重ねて成長し、日本を代表する選手になり、そして天理大に悲願の初優勝をもたらした。【南谷竜則】

(2021年1月11日、ニッカンスポーツ・コム掲載)