ハリウッド映画の祭典アカデミー賞授賞式が3月10日（日本時間11日）にハリウッドのドルビー劇場で開催され、原爆の父を描いたクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が作品賞や監督賞など最多7冠に輝きました。「ゴジラ-1.0」が邦画初となる視覚効果賞を獲得する快挙で、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」も21年ぶり2度目の長編アニメーション賞を受賞し、日本作品が2冠を達成したことでも話題です。

日本作品が2冠を達成

アカデミー賞授賞式の後は、恒例のアフターパーティーが行われます。オスカーの夜は、ロサンゼルスのあちらこちらでパーティーが開催されて一晩中盛り上がりますが、公式のアフターパーティーは授賞式会場に隣接する建物で行われる「ガバナーズ・ボール」だけ。各部門のノミニーやプレゼンテーターとその同伴者しか来場が許されない最も権威のあるアフターパーティーで、受賞者がトロフィーを手に最初に祝杯をあげる場でもあります。

ガバナーズ・ボールでは毎年、高級食材をふんだんに使った豪華な料理とお酒が提供されます。メディアにも完全非公開のパーティーで、「ゴジラ-1.0」のチームやノーラン監督、主演女優賞に輝いたエマ・ストーンら受賞者たちは、どんな料理を楽しんだのでしょうか。

120人のシェフ、1500人のゲスト

おなかを空かせてやってくるセレブたちの胃袋を満たすのは、アカデミー賞公式シェフの異名を持つウルフギャング・パック氏。日本でも自身の名前を冠にしたレストランを展開しているので、名前を聞いたことがある方も多いことでしょう。120人のシェフを率いて1500人のゲストをもてなしたパック氏が、授賞式を前に厨房で日刊スポーツの取材に応じ、パーティー料理を特別に披露してくれました。

「今年も宮崎牛を提供できてうれしい」

ガバナーズ・ボールのシェフを務めて今年で30周年となるパック氏は、「こんにちは」と流暢な日本語で出迎え、「今年も宮崎牛を提供できてうれしいです」ときれいなサシが入ったステーキ肉を見せてくれました。パック氏によると、宮崎牛ステーキを振る舞うのは7年連続。トム・クルーズやレオナルド・ディカプリオからノーラン監督までみんな大ファンだといいます。

パック氏は「みんなが楽しめるよう、いろいろな料理をたくさん」と提供メニューについて話します。内容は宮崎牛のほか、うなぎやフルーツの寿司に刺し身、カルパッチョ、サラダ、パスタ、リゾット、ミニハンバーガーなどメニューは多岐に渡り、40種類以上の料理と37種類のデザートを準備していました。

24カラットの金箔オスカーチョコ

スターたちに人気のメニューは伝統として毎年欠かさず提供しているとのことで、定番メニューは「窯焼きのスモークサーモンピザやチキンポットパイ、オスカー像を型取ったスモークサーモン、トリュフを使ったマカロニ＆チーズ」。

また、24カラットの金箔をコーティングしたオスカー像の形をしたチョコレートは、おみやげに持ち帰れるよう今年も3500個用意。さらに30周年となった今年は、シーフドパエリアやフィッシュ＆チップス、ヨークシャー・プディング、北京ダック、トリュフリゾットなどの新メニューも登場していました。

それだけたくさんの料理を準備するのに必要な食材は、寿司飯45キロ、醤油75リットル、刺身用ハマチ23キロ、スモークサーモン90キロ、宮崎牛55キロなどと驚くほどの量でした。

特別料理を即席で作ることも

スターたちから絶大な人気を誇るパック氏らしく、時にメニューにはない特別料理をオーダーされること もあり、「シンプルなパスタを食べたい気分」というマーティン・スコセッシ監督のために、即席でトマトとバジルのパスタを作ったこともあったと振り返りました。また、「ブロークバック・マウンテン」（05年）でオスカーを受賞した台湾出身のアン・リー監督にはお祝いで香港スタイルの蒸した魚とライスを出して喜ばれたこともあったといいます。

もしかすると、今年はゴジラチームに何か特別な一品が、お祝いで提供されたのかもしれません。

【ロサンゼルス＝千歳香奈子通信員】