「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS=pollen-food allergy syndrome)」という疾患名を聞いたことはありますか? 果物や生野菜を食べた時に唇や口、喉などにイガイガ感やかゆみ、腫れなどのアレルギー症状が出る疾患で、「口腔アレルギー症候群(OAS=oral allergy syndrome)」とも呼ばれています。
症状が現れても、多くはしばらくすると自然に治るものの、まれに吐き気や腹痛、下痢などの消化器症状やじんましんなどの皮膚症状、ぜんそくなどの呼吸器症状、命に関わるショック状態を伴うアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
口の中の粘膜に触れて起こる口腔アレルギー症候群
花粉-食物アレルギー症候群は、口の中の粘膜に触れて起こるアレルギー反応で、体内のIgE抗体(アレルギー物質に対する抗体)が関係しています。果物や生野菜に、花粉に含まれるアレルギーの原因物質(アレルゲン)とよく似た構造のものが含まれているため(交差反応)、花粉症をもつ人に症状が出現するといわれています。
罹患している花粉症の種類によって、アレルギーを発症する食べ物が異なってくるので、下の図を見て思い当たる節がある方は確認してください。
<花粉-食物アレルギー症候群の花粉と食品>
■1月~6月 シラカバ・ハンノキ=リンゴ、桃、大豆など
■2月~5月 スギ・ヒノキ=トマトなど
■5月~10月 オオアワガエリ・カモガヤ=メロン、スイカ、トマト、キウイなど
■7月~11月 ヨモギ=セロリ、ニンジン、マンゴーなど
ブタクサ=メロン、スイカ、キュウリ、バナナなど
対策としては、アレルギーの原因となる食物を確認し、食べるのを避けることが基本です。自然に治るケースもあるものの、舌下免疫療法や皮下免疫療法などが現在、研究されています。
加熱したり加工食品なら食べられるケースも
大好きだった果物や生野菜が大人になって、急に食べられなくなることもありえます。ただ、これらの食物に含まれるアレルゲン(タンパク質)は熱に弱いため加熱したり、缶詰などの加工食品であれば、食べられるケースもあります。
もちろん、花粉症の人が全員、口腔アレルギー症候群を発症するわけではないので、過度に恐れる必要もありません。もしも花粉症であり、上記食品でアレルギー症状が出ていると感じる場合は、アレルギー専門外来に相談をしてみましょう。
薬剤アレルギーやラテックスアレルギーの方も要注意
一方で、花粉症以外のアレルギーを持つ人も口腔アレルギー症候群を発症することはあります。特に、「気管支喘息の既往のある人」「薬剤アレルギーの人」「即時型食物アレルギーの既往がある人」「ラテックス(天然ゴム)アレルギーのある人」は要注意。ラテックスアレルギー患者の一部では、果実や野菜を食べた際に口腔アレルギー症候群の症状が出てくることもあり、この病態は「ラテックス・フルーツ症候群」と呼ばれています。
花粉症対策には、腸内環境を改善する発酵食品、魚に含まれるDHAやEPAなどの脂肪酸、皮膚や粘膜を健やかに保つビタミンA、抗酸化作用のあるビタミンCやEなどを意識して摂りたいところです。食事や生活習慣も整えていきましょう。