<免疫力と海藻(上)/海藻よもやま話(11)>

インフルエンザが流行するシーズンとなりました。例年、ピークは1~2月で毎年約1000万人、約10人に1人が感染していると言われています。新型コロナウイルスが流行している今年、私たちはどのようにして感染症対策をとればよいのでしょうか? 

予防策の1つとして食事が挙げられます。特に免疫力を高める食品として「海藻」に注目し、2回に分けてお伝えします。

「自然免疫」と「獲得免疫」

毎年冬になると、全国でインフルエンザウイルスが猛威を振るいますが、同じ環境で生活をしていても、かかる人とかからない人がいます。それは一人一人、「免疫力」が違っているからです。

そもそも免疫(力)とは、1度かかった病気には2度とかからない、あるいはかかったとしても、病状を軽く済ませるための私たちの体が本来持っている防御システムのことで、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類に分けられます。

自然免疫は、生まれつき体に備わっている免疫のこと。一方、獲得免疫は生後、ウイルスや細菌などに感染したり、ワクチンを接種したりすることで獲得する免疫のことです。

3段階のバリアで体守る

ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入するのを阻止する最初のバリアは、自然免疫が担っています。皮膚やまつ毛、気道の粘膜、唾液や鼻汁、胃液などの物理的バリア。それらの唾液や鼻汁、胃液などの分泌粘膜に含まれている殺菌性物質などの防御物質による化学的バリア。さらに、これら2つのバリアを突破して侵入してきた病原体に対しては、マクロファージや樹状細胞などの免疫担当細胞が殺菌物質を分泌したり、病原体を食べたりして対応します。

それでもダメなら、好中球や単球といった白血球が新たに駆けつけて、病原体の働きを弱めたり、殺したりする細胞性バリアとなります。このように、体内の免疫は3段階のバリアによって、ウイルスなどの病原体から体を守ってくれているのです。

免疫力高めるNK細胞の働き

数ある免疫担当細胞の中でも特に注目されているのが、リンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞です。NK細胞は全リンパ球の5~15%を占め、細胞死をもたらす酵素や細胞障害因子を持ち、全身を巡回しながら最前線部隊としてウイルスや細菌を監視してくれています。このNK細胞の働き(活性)が弱い人は風邪にかかりやすくて治りにくく、感染症での死亡率も高くなります。すなわち、「免疫力=NK活性」とも言えるほど、NK細胞の働きが重要なのです。

ぬめり成分フコイダンでNK細胞活発

では、NK細胞の働きを高めるにはどうしたら良いのでしょうか。その答えの1つが、毎日「海藻」を食べることです。

私たちが普段よく食べているコンブやワカメ、メカブ、モズク、ヒジキなどの褐色の海藻(褐藻)には、水溶性食物繊維の一種である「フコイダン」という成分が多く含まれています。フコイダンは、海藻特有のぬめりの成分の1つです。

例えば、フコイダンをマウスに1カ月間与え続けたところ、NK細胞の働きを活発にする物質の分泌量が高まったことが報告されています(※1)

マウスを使った免疫活性化物質の分泌量グラフ
マウスを使った免疫活性化物質の分泌量グラフ

国際健康開発研究所所長であり、武庫川女子大教授の家森幸男氏らの研究では、特別養護老人ホームに入所する67~102歳の男女70人を2グループに分け、1つのグループにだけフコイダン300mgを毎昼食時に食べてもらったところ、そのグループだけがNK細胞の働きが高まったという報告もあります(※2)。

特別養護老人ホームに入所者に対するフコイダン摂取の効果グラフ
特別養護老人ホームに入所者に対するフコイダン摂取の効果グラフ

つまり、フコイダンを含む海藻を毎日食べることで、免疫担当細胞であるNK細胞の働きを高めることができるという訳です。

毎日小分けカップ1~2カップ

ちなみに、フコイダン300mgとはモズクやアカモクであれば25g程度、メカブなら70g程度です。スーパーマーケットなどで売られている四角や丸のカップに小分けされた商品であれば、1日に1~2カップ程度。1度にたくさん食べるよりも、少しずつでも毎日続けて食べることが大切です。

亜鉛などミネラル、ビタミンも豊富

また、海藻にはフコイダン以外にも、免疫力アップに欠かせないミネラルやビタミンも多く含くまれています。特に「亜鉛」は全身の細胞に存在していて、侵入してきたウイルスや細菌などの病原体をNK細胞などの免疫担当細胞が攻撃する際に必要なミネラルです。

βカロテンは強力な抗酸化作用を持ち、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、口や鼻、のど、腸などの粘膜を丈夫にし免疫力を高めることが知られています。このように、海藻には免疫力を高める成分がたくさん含まれていますので、少量でもいいですから、サラダやみそ汁、味付けメカブやモズクなど、皆さんのお好きな食べ方で積極的に取り入れてみてください。

毎日海藻をとり続けるにあたって、おすすめのレシピを紹介します。「モズクの酸辣湯」です。

モズクは、免疫力を高めるフコイダンが豊富で、シメジにも、同じく免疫力を高めるβグルカンが含まれています。海藻とキノコを上手く組み合わせて免疫力を高め、これから迎える冬の季節恒例のウイルスたちを撃退しましょう!

【提供=カネリョウ海藻株式会社】

※1 Maruyama H. et al, Planta Med. (2006) 72; 1415-1417.
※2 Negishi H. et al, J. Nutr. (2013) 143; 1794-1798.