今ではチアダンスは、幼児からシニア世代まで生涯スポーツとして多くの方に親しまれています。チアダンスが心身の健康に役立つことやその理由については、過去2回のコラム(研究報告から(1)研究報告から(2))で紹介してきました。

九州大学大学院でチアダンスが心身に与える影響について研究している太刀山美樹さん(MIKI・ファニット代表/日本健康指導士会・福岡県理事)は「チアをすると、なぜ人がここまで変わるのか」という疑問から、心理的ウェルビーイングの観点からもチアを研究しています。

チアをすると「人格的成長・自己受容」が向上

太刀山さんが昨年、フィンランドの大学との研究合同フォーラムで発表した報告によると、チアダンスをすることで、心理的ウェルビーイングに含まれる満足感・幸福感の尺度のうち、特に「人格的成長・自己受容」が向上したといいます。この研究の対象は高齢者でしたが、子どもや学生にも同様の結果が当てはまるそうです。

笑顔で技を決めるチアリーダー(提供=一般社団法人チアファミリー)
笑顔で技を決めるチアリーダー(提供=一般社団法人チアファミリー)

私はこれを聞いて「チアスピリット」を思い浮かべました。チアを通して夢や目標が見つかり、それによって成長する。さらに、いつも笑顔で誰かを応援し、仲間を思いやるという心の持ちようです。

笑顔で応援、仲間を思いやる「チアスピリット」

太刀山さんから「チアの皆さんは応援する中で、何を意識しているのですか」とたずねられました。私は「私たちは、見てくれる人に笑顔を届けて、元気になってもらえるようにと思って踊っています。演技を見た人から感動してもらえるようなチアリーダーは、本当に素敵なチアリーダーだと思います」と答えました。

チアリーダーたちは、自分たちの演技を全身で表現し、スポーツチームや地域イベントを盛り上げたり、大会で演技を披露したりしています。どんな時も弾ける笑顔を見せ、前向きな言葉を発するのはチアやダンスが大好きだからで、自然と身体から湧き上がってくるのです。

チアリーダーの笑顔は周囲も笑顔に、元気にしてくれる(提供=一般社団法人チアファミリー)
チアリーダーの笑顔は周囲も笑顔に、元気にしてくれる(提供=一般社団法人チアファミリー)

そこには、ありのままの自分を受け入れ、さらに目標に向かって自分を成長させていくマインドがあります。その自己肯定感が仲間への思いやり、周りを笑顔に、元気にしたいと思える心、「チアスピリット」につながります。

チアリーダーたちが発するエネルギーは見ている人たちに伝わり、その人たちを笑顔の渦に巻き込むことで、その場が一体となります。チアリーダーたちは、応援することで得られる観客との一体感、熱い応援の波の素晴らしさを知っているとも言えます。そう説明すると、太刀山さんも納得した様子でした。

指導者も心理的ウェルビーイングを意識

研究では、「チアの指導者たちも心理的ウェルビーイングを意識している」との結果も出たそうです。もちろん、私もそこは意識してレッスンしています。まずは、皆さんが「楽しかった~」と笑顔になり、元気になることが大切だと思っています。

より多くの方がチアスピリットを理解し、触れていただくように、またそんなチアリーダーたちを多くの方が応援してくれるよう、引き続き私も頑張っていきたいと思います。

今回の応援レシピは「チアアップ☆豚平焼き」です。肉・卵・野菜が入り、栄養バランスも良く、疲れていてもパワーが復活する応援レシピです。

心身ともに健康で、人生を楽しく過ごすには食事も大切です。栄養バランスの良い食事をしっかりとっていきましょう。

※研究報告
2022年11月「Design study of exercise program for active seniors ~Grand cheer~」MIRAI 2.0 Research and Innovation Week 2022
2022年10月「高齢者を対象とした運動プログラムにおける心理的ウェルビーイングのデザイン研究」日本デザイン学会第5支部

※研究協力
九州大学大学院芸術工学研究院・平井康之教授

元NFLチアリーダー・松崎美奈子

<関連コラム>
チアダンスで脳疲労やストレスが改善、ポジティブ感情が向上/研究報告から(1)
チアダンスが心身の健康につながる理由、ポジティブ感情の源は/研究報告から(2)