<イップスって何?(20)>

前回までイップスに陥った際の克服、改善方法を見てきました。ただ、すべての選手が専門家に指導してもらえる環境にはありません。未然に防ぐ方法はないでしょうか。

イップス研究所の河野昭典所長(60)は「指導者の理解が大きいでしょう。研究所で選手がイップスを克服しても、チームの指導者に理解がなければ、また投げられなくなってしまいます」と言います。「日本の指導者は『こうしろ』という強制が多い。すると選手は『こうしなければ』と固定観念を持ってしまう。これがイップスを生み出してしまうんですよ」。

指導者がイップスを生み出してしまう場合があるということでしょうか?

「そうです。もちろん怒る、叱るも大切です。ただ、子供たちは感性も鋭く、感じやすい。指導者が本当に自分のために叱ってくれているのか。思い通りにならないから怒っているのか。判断できていると思います。特に小、中学生は、指導者や親御さんの言葉、態度が大きいと思います」

具体的にはどんな指導が問題でしょうか?

「画一的な指導ですね。それぞれの選手で体やメンタルが違います。それなのに『こう投げるべき』と指導する。それが自分に合わない動作だったら…そこからおかしくなってしまいます」。河野所長の口調が熱を帯びてきました。【飯島智則】