私が所属する女性アスリート外来には、様々な不調を抱えている成長期のアスリートや、コンディション管理のために通うアスリートがいます。

ここに通うきっかけのほとんどが、子どもの不調に気づいた保護者の方が病院を探して受診するケースです。アスリート本人は自身の不調に気付かない、またその対処法が分からない状態でおり、身近にいる保護者の方が気付くことがあります。

特に中学生から高校生は思春期で、反抗期真っただ中ということもあり、親子でのコミュニケーションが難しい年頃です。保護者としてアスリートの不調に気づくために、顔色や食欲など、毎日の様子を確認することに加え、データでその変化を確認しておきましょう。

保護者が押さえておきたい子どものコンディション管理のポイント

変化を確認するにはデータをとっておくと安心です。以下を参考に記録しておきましょう。

①成長曲線
②定期的な体組成の計測(除脂肪体重を確認する)
③「アスリートダイアリー」などでコンディション、食事内容の記録

毎日顔を合わせていると逆に、痩せてきていることや月経が毎月来ていないことなどに気付かないこともあるようです。受診する際も参考にすることもありますので、「感覚」ではなく、数字として記録を残しておきましょう。

また、女性アスリート外来を受診するアスリートを見ていると、不調をきたしやすいタイミングがあるように思います。以下のタイミングを参考にして、その時期はコンディション管理を重点的に行い、不調が出ないように予防策をとっておきましょう。

アスリートが不調をきたしやすいタイミング

①小学校高学年から中学入学時

小学校高学年になると、練習時間が長くなり、練習頻度が増えることが多いです。そのタイミングでは食事量を増やす、その他の運動量を調整するなど、必ず対策をとりましょう。中学校に入学してからは、部活とクラブチームを両立するなど無理なスケジュールは禁物です。成長するには休養も必要で、食事がとれないほど運動をしてしまっては本末転倒です。無理のない運動量を調整できるようサポートをしましょう。

②高校や大学進学時

進学先では運動量の増加とともに、強度が上がります。さらに通学時間が長くなったり、移動手段も変わったりすることもあります。運動量に見合った食事量がとれるように、1食の食事量を増やし、補食をこまめに入れるなど、対策をとるようにしましょう。

③1人暮らしなど生活が変わるとき

あらかじめ、いつどのような食事をとるのかシミュレーションをしておきましょう。昼食は学食を利用ならどのような栄養補給をするのか想定し、自宅で食べるもの、調理方法、近隣のスーパーなどの購入先も押さえておきましょう。実際に自分で準備できるかも含めて、事前に買い物から調理、後片付けまでの一連の流れを練習しておくと安心です。

食を通じて親子の濃密な時間を

アスリートの成長とともに、保護者の関わり方は変わってくるように思います。選手自身で食事の準備をして栄養補給できることが、食の自立であり、ご家庭での食育のゴールではないでしょうか。

ご家庭で、保護者がアスリートの飲食すべてを準備しなければならないジュニア期は、時間もお金も手間もかかり、とても大変ですが、振り返ると実は短くて濃密な期間なのかもしれません。アスリートから「母の手料理が好き!」「試合の時は必ず鮭おにぎりを作ってくれた」「仕事をしているのに温かいお弁当をもって練習終わりに必ず迎えに来てくれた」などといった言葉を聞くと、「食を通じて保護者の思いは伝わっている」と思います。

必要なエネルギーを充足させることと同じくらい、日々の食事をおいしく楽しく食べてもらいたいと思っています。

今回で、最後のコラムとなります。長きに渡りありがとうござました。

最後のレシピは、「チーズウインナースティック」です。カルシウムが豊富なチーズを食べる際に、ちょっとだけ手を加えてみてはいかがでしょうか。

少しでも手を加えた料理は、そのまま食べるより、目も心も喜ぶと思います。選手には補食やお弁当の1品として、大人もおつまみとして楽しめますよ! 是非お試しくださいね。

女子アスリート/管理栄養士・上木明子