「若い頃に比べて太りやすくなった」「減量しても体重が減らなくなった」と感じる人は多いでしょう。前回のコラムで「加齢に伴い起こる体の変化と対策」について解説しましたが、どれくらい加齢とともに太りやすくなるのか、データを元に見ていきましょう。
下の図は年齢別に見たエネルギー消費量のグラフです。1日における体重当たりの消費量(kcal)は出生時をピークに20歳まで急激に低下しますが、 20歳以降は緩やかに低下しています。低下の原因は、基礎代謝量(生きていくために必要な最低限のエネルギー)と除脂肪量(骨格筋や臓器など)の減少や代謝率の低下だと考えられています。
次に基礎代謝量にフォーカスします。日本人における基礎代謝量の報告例の図を見ると、やはり出生時をピークに20歳まで急激に低下しますが、その後は緩やかで大きな低下は見られません。つまり、加齢ともにやせにくくなる最たる理由は、基礎代謝量の低下によるものだと思われていますが、実は成人以降、基礎代謝量はそれほど低下しないのです。
基礎代謝量低下以外の理由は…
では、太りやすくなる理由は他にあるのでしょうか。令和元年国民健康・栄養調査結果によると、歩数の平均値は、男性は20代以降減少、女性は50代までは変化はありませんが、その後減少しています。あくまでも歩数のみのデータでしかありませんが、加齢とともにやせにくくなったと感じるのは、活動量の低下によってエネルギー消費量が減ったことも大きな要因と言えます。特に男性は傾向が顕著に見てとれます。
エネルギー消費量が減っているのに、それ以上食べていたら必然的に太ります。自分は1日にどのくらいエネルギーが必要なのか、次の簡易式を使って計算し、体重コントロールや健康維持に役立ててください。エネルギーを摂取したら無理のない範囲で運動して、消費すると良いでしょう。先に紹介した「加齢と共に変えたい食べ方のコツ」も上手に利用してください。
■1日におけるエネルギー必要量の簡易式
推定エネルギー必要量(kcal/日)=体重当たりの基礎代謝量(kcal/kg体重/日)×体重(kg)
なお、アスリートは除脂肪体重を使って算出する別の計算式を使用します。
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル+エネルギー蓄積量(kcal/日)
参考:https://athleterecipe.com/calculation/eer
その他、副腎皮質ホルモンや成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンなども代謝に関係しているため、更年期以降太りやすくなる要因になります。それについては次回に説明します。
※推定消費エネルギー量(推定エネルギー必要量)は基礎代謝量と身体活動レベルで計算して表すことができます(消費エネルギー量を測定することは一般には難しく、専門的で高価な分析機器が必要なため、推定エネルギー必要量を計算し、推定消費エネルギー量と考える)。成長期以降のエネルギー蓄積量はゼロ(0)になります。
参照:日本人の食事摂取基準2020年度、令和元年国民健康・栄養調査