大動脈の血管壁が裂け、死につながることも多い「急性大動脈解離」は男性で発症しやすい病気とされてきたが、実は発症率に男女差はないことを熊本大学、宮崎県立延岡病院、国立循環器病研究センターの研究チームが明らかにした。女性は病院に到着する前に死亡するケースが多いため、これまで症例が少なかったという。研究の成果は2023年10月2日に米国心臓病学会が発行する医学雑誌「JACC: Advances」オンライン版に掲載された。

熊本大学生命資源研究・支援センターの丸目恭平客員助教らの研究チームは、人口約12万人の延岡市で集団ベース研究を実施。2008年から2020年までの13年間で病院に到着する前に心停止した人のうち、到着後にCTで急性大動脈解離だったと分かった人を対象とした。

リリース資料から
リリース資料から

総計266人が該当し、女性は137人、男性は129人で、人口比などを考慮すると発生率は同等だった。そのうち病院に到着する前に亡くなる率は女性が37%と男性の21%に比べて高かった。また、女性の方が心臓を出てすぐ上に向かう大動脈(上行大動脈)に発生する、特に致死率が高いタイプの病態が多いこと、年齢が男性より高いことも分かった。