エネルギーを大量に必要とするアスリートは、エネルギーの素となる糖質・脂質・タンパク質の3大栄養素を摂取しなければなりません。これらの栄養素は体の細胞内にあるミトコンドリアに運ばれ、ATPというエネルギーを作り出します。

栄養素→エネルギー(ATP)にする流れを「代謝」と呼びますが、アスリートはこの代謝を活発にして、体や頭を動かすエネルギーをたくさん、素早く作る必要があります。

ココナッツオイルやMCTオイル

多くのエネルギーを早く作り出す方法の1つに、ココナッツオイルやMCTオイルに含まれる「中鎖脂肪酸を摂る」という方法があります。

通常、栄養素は様々な過程を踏んで、エネルギーが作られる回路を通っていきます。特に脂質は、カルニチンという物質がなければミトコンドリアの内膜に入ることができませんが、中鎖脂肪酸は、カルニチンなしで内膜に入り、エネルギーを作り出せます。

ただし、デメリットもあります。中鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すルートを使うと、睡眠を促すアデノシンという物質が作られません。アデノシンが不足すると不眠、寝つきが悪い、悪夢を見るといった副作用が表れます。

アデノシンを多く含む食材は、酒粕。ココナッツオイルと組み合わせて摂ると、このデメリットをカバーできます。今回紹介するレシピは、ココナッツオイルと酒粕を使った「酒粕とココナッツオイルのジンジャークッキー」。サクサクとした食感で、後を引くおいしさ。トレーニングや試合前の軽めの補食としてお試し下さい。

また酒粕には、アミノ酸やビタミンB2・B6、葉酸、食物繊維、亜鉛などが豊富に含まれるほか、βグルカンという成分を含み、脂肪の排泄を促す働きを持ちます。免疫や血圧に関しても色々な研究がなされ、プラスとなることが分かっています。

酒粕自体、栄養の宝庫ですので、アスリートにも積極的に摂ってほしい食材です。ただしアルコール分が入っているのでしっかり加熱して使うようにして下さい。これからの季節は、粕汁や粕鍋もおすすめです。

管理栄養士・園部裕美