光老化を食で防ごう! 皮膚科学の権威で光老化啓発プロジェクト委員でもある川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士の園部裕美さんが対談を行いました。園部さんはトップアスリートの食事サポートを行い、幼い子ども2人を育てる主婦でもあります。光老化とは? 正しい日焼け止め(サンスクリーン剤)の使い方とは? 主婦目線、管理栄養士目線でたくさん聞いちゃいました。「光老化啓発プロジェクト」×「アスレシピ」コラボならではのケア情報。ジュニアアスリートもお母さんたちも必読です。

川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士・園部裕美さん01
川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士・園部裕美さん

川島 突然ですが、日焼けは健康的というイメージをお持ちじゃないですか?

園部 はい。特に子どもは肌が焼けていた方が健康的な感じがします。

川島 そのイメージが実は問題なんです。昔は母子手帳にも赤ん坊の日光浴が健康にいいと書かれていた。でも、今は無くなりました。誰も声高に言わないですけど、子育てや教育の場では日焼けはマズいと分かっているんです。

園部 どういうことでしょうか?

10代に浴びる太陽光線がカギ

川島 実は我々が生涯に浴びる太陽光線の半分は10代の間に浴びてしまうんです。10代で浴びた量によって皮膚がんの可能性が上がっていくと言われるようになってきた。だからこそ赤ちゃんの頃から太陽光線へのケアという意識を持っていかなきゃいけない。

園部 ええ! 10代で半分ですか。やっぱり外で遊んだり、部活をやる子どもが多いからですかね?

川島 そうですね。部活で室内競技と室外競技の人を比べると、大人になっての肌に明らかに違いが出る。室外競技でケアをしなかった選手はシミがすごく出ちゃっていますよ。

園部 私、実業団の男子陸上部をサポートしていたんですけど、選手たちは日焼けへのケアをほぼしてなかったですね…。

川島 それと日焼けがパフォーマンスの低下につながるというのは否定できない。日焼けで真っ赤に焼けると皮膚の中で炎症が起こる。するとうみが出て、水が出る。皮膚で循環している水分量が減る。脱水が起こって、極端な話だと熱中症が起こる。それだけでなく疲労がたまってしまって、パフォーマンスが落ちることが考えられます。

園部 春先も同じですか? 夏に比べるとあんまり日焼けをするイメージがないのですが?

川島 この季節は室内から外にでると太陽光線が暖かいなと思いますよね。あれは赤外線領域ですね。赤外線の光は皮膚の奥まで浸透しています。今は露出部へのケアも薄いので皮膚温がどんどん上がっていく。体温を下げようと発汗していく訳で、脱水症状になりやすいんです。紫外線による日焼け、赤外線による皮膚温上昇での脱水というのもパフォーマンスの低下につながっていきます。

川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士・園部裕美さん02

皮膚がんにつながるリスク

園部 それはアスリートには困りますね。日焼けは恐ろしいのですね…。皮膚がんのお話がありましたが、日焼けが光老化に関係するのですか?

川島 まず、老化って分かりますよね。年を取ると体形も変わるし、見た目も変わる。でも、お尻や二の腕の皮膚は白くて、シミもシワも少ないですよね。

園部 確かに。普段、隠れている部分ですよね?

川島 そうです。それに比べて、顔とか手の甲は大きな変化が起こってしまいます。これは太陽光線、特に紫外線の領域が肌に影響を与えているんです。

園部 太陽に当たって、日に焼けることで肌が老化してしまうんですか?

川島 光老化は肌にシミ、シワ、たるみをもたらして、その先に皮膚がんを起こす可能性がある。我々皮膚科医は皮膚がんを最も心配しています。だからこそ皆さんに光老化の怖さを理解していただき、早くから対策をしていただきたいんです。

管理栄養士・園部裕美さん

肌タイプを知る

園部 日焼けをすると肌が赤くなったり、黒くなったり、肌には光に対する反応にタイプの違いがあると聞きました。

川島 ①日焼けをすると肌が赤くなって、そのまま冷めていって黒くならない。

②日焼けをすると赤くなって、その後に黒くなる。

③日焼けをしてもあんまり赤くならずに、黒くなる。

この3つに分けられます。日本人は②タイプと③タイプが多いですね。欧米の白人は黒くならないで赤くなってしまうというのが多いですね。

園部 日焼けに強い、弱いというのがあるんですか?

川島 光老化をしていくと、究極は皮膚がんになってしまいます。世界レベルで見ると白人に1番皮膚がんが多く、日本人の黄色人種、黒人という順序がはっきりしています。紫外線に対する感受性が強いと皮膚の細胞ががん化を始めるきっかけになります。

園部 自分がどのタイプだという見分け方とかはありますか?

川島 「日焼けすると赤くなります? 黒くなります?」というところから類推します。ご自身で判断するなら日焼け後の自分の肌を見るのが大事です。

園部 ずっと気になっていたのですが、曇りの日と晴れの日の紫外線量ってどの程度違うんですか?

川島 曇りの日は晴れの日の半分程度。雨でも紫外線は0じゃないですからね、十分日焼けしますよ。

園部 うわぁ、外に出る日はケアしないとダメですね。私、今はUVケア機能がある化粧下地を使っているから大丈夫かなと思っているんですけれど、日焼け止めを選ぶ目安はありますか?

川島 光老化啓発プロジェクト委員会ではSPFは15以上、PAは+以上の機能を発揮できる製品を使おうと推奨しています。ただしここで大事なのは、表示されているSPF、PAの値は塗れば必ずその機能が得られるというものではないということです。

園部 え、じゃあ…。

川島 SPF5とかPA+の化粧下地だと、下地として塗る量を考えると日焼け止めの効果は全く不十分です。化粧下地だけでは日焼けしてしまいます。

園部 ええ…。

川島眞東京女子医大名誉教授

全然足りていない日焼け止め

川島 日焼け止めについても同じことが言えます。そもそも皆さん塗る量が少ないんです。ジェル、パウダー、乳液などの日焼け止めの、どれを使っても全然塗る量が少ない。表示されている効果を発揮させるためには、どのサンスクリーン剤でも1平方センチあたり2ミリグラムが必要なのですが、皆さんの使用量は塗りやすいジェルでも1ミリグラム未満。だからSPF30の表示でも、皆さんが普段通りに塗ったらSPF15程度の効果にしかならない。化粧下地のSPF5なんてほぼ0に等しいです。

園部 意味なかった!

川島 もう一つ言いたいのはスプレーなんです。塗るのが楽だし、手も汚れないから売れているんですけど。でもスプレーだと規定量の10分の1くらいしか塗れていないのですよ。実際には片腕10秒くらい塗らないといけないのに!

園部 えー!

川島 ということは、スプレーは効果が低くて、塗った気になってるだけ。

園部 でも子どもはジェルとかクリームとか、ベタベタしたのを嫌がりますよね。

川島 そうはいってもスプレーをひと吹きで塗った気になってしまって日焼けするのが一番まずい。クリーム、ジェルでも塗り心地の良い製品もありますから、それをまず塗ることです。スプレーは重ね塗りや塗り直し用と思ってください。

園部 じゃあ部活をやる中高生なんかは昼休みにしっかりジェルなどを塗って、部活前にスプレーでシュッと吹きかけて塗り直したらいいですか?

川島 そうですね。その方が効果を増してくれます。ただスプレーだけというのは避けていただきたい。

川島眞東京女子医大名誉教授と管理栄養士・園部裕美さん03

塗りやすい製品を選んで塗る適量を知る

園部 部活をやっている子どもが日焼け止めを選ぶ際の目安はありますか?

川島 「十分に塗れる」ということが大事だと思いますね。言い換えると、塗り心地ですね。いろいろな製品で試してみると、皆さんが量的に最も多く塗ることができるのがジェルです。ジェルは二度塗りがやりやすい。そして、あまりベタつかない。二度塗りくらいの量を使わないと、十分な効果がないですからね。二度塗りできるモノを選ぶというのは意味があります。

園部 自分がしっかり日焼け止めを塗れているという判断はどうしたらいいですか?

川島 十分に塗ったところと塗らなかったところで、太陽光にあたった後の日焼けの度合いを比べるのが最も分かりやすいのですが、少々乱暴ですので、自分では十分塗ったという感触を持って太陽光にあたった時に、日焼けを少ししてしまったか、日焼けを全くしなかったか、の経験値から適正量を知ることが大切でしょう。十分量のイメージは、こんなに塗らなきゃいけないの、という感じと思ってください。

園部 しっかり塗った時のクレンジングはどうしたらいいですか?

川島 普通の洗い方で落ちる製品が増えて来ていますね。それらは普通に石けんなどで洗えば問題ないですよ。

>> 「光老化啓発プロジェクト」×「アスレシピ」対談/下

川島眞(かわしま・まこと)

1978年東京大学医学部卒業。東京女子医科大学皮膚科主任教授を経て、現在は東京女子医科大学名誉教授、医療法人社団ウエルエイジング総院長。専門はアトピー性皮膚炎、ウイルス感染症、美容医療。日本美容皮膚科学会前理事長、日本香粧品学会前理事長、日本コスメティック協会理事長、NPO法人皮膚の健康研究機構副理事長。

園部裕美(そのべ・ひろみ)

管理栄養士。スポーツ栄養コンサルタント。予防医学士。
病院栄養士、飲食店勤務を経て、陸上実業団チームの専属栄養士に。現在はフリーとして、トップアスリートらの栄養サポートや指導を行っている。スポーツの世界だけでなく、すべての人に共通する「予防栄養」を分かりやすく、実践しやすく伝えるため、栄養コンサルティングやセミナーを実施。日本人として和の食事を大切にしてほしいとの思いと、腸の力をつけることを重要視していることから、みそや納豆を手作りするなど、糀(こうじ)や醤(ひしお)の発酵食ワークショップも開催している。