これまで外務省などで試食会などを開いてきたが、あら~麺は、「麺屋武蔵」の店舗では提供されていない。新鮮な魚のアラだけを毎日入荷することは、物流コストの面からも難しいためだが、魚が毎日直送される「わたす-」との協力が、都内での提供を可能にした。レストランで使う魚は日々変わり、使うアラも日々異なる。そのためスープの味も日々、微妙に変化する。矢都木社長は「普通なら、ラーメンの味が毎日違えばお客様に怒られますが、あら~麺はその変化を楽しんでほしい」と話す。

「わたす日本橋」の「あら~麺」
「わたす日本橋」の「あら~麺」

今回、メディアへの試食会で提供された日のスープには、ブリとタイのアラが使われた。入ってきたのがこの魚だったからだ。ほのかな海鮮の香り、意外にあっさりした味わいが印象的だった。このように、日によって入荷する魚は違うので、アラの種類も日々、変わる。あら~麺は、メニューの名前というより、食品ロスになってしまいそうな食材を活用したラーメンという「概念」(矢都木社長)だという。

おらが町石巻の「名物メニュー」に

現在、レギュラーメニューで食べられるのは石巻市の「いしのまき元気いちば」だが、将来的には市内のそば屋や、スナックなどでも食べられるようなおらが町の「名物メニュー」にすることを目指す。新鮮な魚がとれる地域なら、どこでもあら~麺の製造は可能だ。矢都木社長は、レシピの提供、普及にも意欲をみせた。条件次第では、全国にも広がる可能性を秘める。

「わたす-」で実際にラーメンを手掛けるのは、料理長の梁島真吾シェフ。実はラーメンをつくるのは初めての経験だった。「最初は、ちゃんとしたものをつくれるか不安だった。アラの取り方、たれの作り方が難しかった」と振り返る。店の通常メニューで使った後、余った野菜もかき揚げにしてトッピング。どこまでも食材の無駄をなくすことで、あら~麺のどんぶり全体が、「フードロス対策」になっている。

日本橋で今月末までの限定発売

ディナータイム限定の提供となる「旬のあら~麺セット」は、1580円(税込み)。仙台野菜と三陸産魚介のかき揚げが付いたあら~麺、本日のサラダ(もしくは煮物)、シェフの気まぐれデザート、セットドリンクで、31日までの限定販売。工夫と手間とアイデアで、食品のロスを少しでも減らすことを、「体感」できる。【中山知子】

◆わたす日本橋 東京都中央区日本橋1の5の8。【電話】03(3510)3185。営業時間(月~土曜日)はランチが午前11時~午後3時(ラストオーダー午後2時半)、ディナーが午後5時~同11時(同午後10時)。日祝日、年末年始は定休。http://www.watasu.net/

<フードロスの現状>
国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、世界では8億1500万人以上(16年)が飢餓や栄養不足に苦しみ、前年から約3800万人増加。一方、廃棄される食品の量も増加傾向で、日本の1年の食品廃棄量は、食料消費全体の約3割に当たる約2800万トンとされ、このうち約646トンが本来食べられるにもかかわらず、捨てられたとみられている。

FAOは昨年5月、洞爺湖サミットで総料理長を務めた日本料理界の第一人者、中村勝宏氏(ホテルメトロポリタンエドモント統括名誉総料理長)を親善大使に任命。国内での普及活動強化を目指している。

(2018年10月14日付日刊スポーツ紙面掲載)