<免疫力と海藻(下)/海藻よもやま話(12)>

前回のコラムでは、海藻に含まれる水溶性食物繊維の一種である「フコイダン」が、免疫担当細胞であるナチュラルキラー(NK)細胞の働きを活発にすることで、免疫力が高まるといったお話をしました。実はもう1つ、海藻は腸を鍛えることで、免疫力のアップに携わっているのです。

腸内細菌と免疫力の関係

私たちの腸内には数百〜千種類、数百兆個、総重量にして1.5~2.0 kgにも及ぶ多種多様な細菌が生息しています。これらの腸内細菌は、宿主であるヒトが食べた食べ物から得る栄養素をエサに発酵することで増殖しています。また、様々な代謝物を作ることで、私たちの健康や疾病に大きな影響を与えています。

善玉菌・悪玉菌・日和見菌

腸内細菌は、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つのグループに分けられます。善玉菌は、私たちの体に有益な物質を作り、腸内の有害な物質を無毒化し、腸内を弱酸性にして免疫力を活性化します。悪玉菌は善玉菌とは真逆の働きをしており、疾病の原因となる有害物質を作り、腸内をアルカリ性にして免疫力を低下させます。

残りの日和見菌は、善玉菌または悪玉菌の顔色をうかがいながら、どちらか優勢な方に加担します。通常は無害ですが、免疫力が低下している状態では悪玉菌の味方になってしまうので、さらに悪い状態へと加速します。

腸内環境は、加齢とともに変化します。50歳を過ぎた頃から腸管機能が低下。腸の働きが衰え、善玉菌の割合が減り、悪玉菌の割合が増えます。善玉菌の割合が減れば当然、免疫力も低下するのです。

加齢に伴う腸の弾力性の変化グラフ
加齢に伴う腸の弾力性の変化グラフ

免疫細胞の約7割が腸に集中

腸の粘膜には、「パイエル板(peyer板)」という組織が存在しています。このパイエル板はヒトにおける免疫の最大の要となる組織で、人体の中では腸にしか存在していません。

この場所では免疫担当細胞が作られているだけではありません。腸内で漂っている細菌やウイルスなどの異物を腸壁の内部に引き込み、パイエル板の内側に密集している免疫担当細胞に触れさせ、攻撃すべき敵の情報をリサーチさせているのです。

いわば、免疫システムの「総合司令塔」。ヒトの体全体の免疫細胞の数は1兆個以上で、その約70%が腸に集中しています。つまり、免疫力を高めるには、腸に存在するパイエル板や免疫担当細胞たちが24時間、365日元気で働けるように、最良な腸内環境を維持してあげる必要があります。

免疫力を上げるための食事とは

では、腸内環境を良くし、免疫力を上げるには、どうすれば良いのでしょうか。腸内環境を良くするためには、「しっかりとした睡眠」「適度な運動」などの生活習慣の改善も重要ですが、腸に直接影響を及ぼす「食事」が、最も重要です。

食事として取り入れていきたいものは、発酵食品、食物繊維、オリゴ糖。中でも特に意識したいのは、食物繊維です。

食物繊維の多くは、多種の腸内細菌が好む栄養素です。腸内環境を良くし、免疫力を高めるためには、たくさんの種類の食物繊維、特に水溶性食物繊維を摂ることが大切です。

水溶性食物繊維は腸内細菌のエサ

水溶性食物繊維は海藻、豆類、キノコ、果物などに多く含まれ、水に溶け、腸の中でドロッとしたゲル状に変化します。この水溶性食物繊維はヒトの消化酵素では分解できませんが、腸内細菌は水溶性食物繊維を栄養素として発酵・分解してエネルギーとして利用することができます。

特に海藻は、水溶性食物繊維の宝庫。海藻を食べることで、ある種の腸内細菌が発酵・分解し、腸内で短鎖脂肪酸という物質を作り出します。この短鎖脂肪酸は免疫力を高めてくれる成分であることが、多くの研究で報告されています。

今回は、植物性乳酸菌と水溶性食物繊維がマッチングした海藻のレシピ「メカブとキムチのどんぶり」を紹介します。

メカブには、腸内細菌のエサとなるアルギン酸やフコイダンといった水溶性食物繊維が豊富に含まれています。キムチにも、腸内細菌を活性化してくれる植物性乳酸菌が含まれています。海藻の水溶性食物繊維と、キムチの植物性乳酸菌がシンバイオティクスとして相乗的、相加的に働くことで、腸内環境を良好にし、免疫力を高めてくれます。

普段の食事の中で海藻を食べて、腸内環境を整え、元気にしておくことが、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染から身を守る上で、非常に大切です。健康な生活を送るために毎日の食卓に海藻を取り入れ、腸を鍛えていきましょう。

【提供=カネリョウ海藻株式会社】