これまで、「スポーツを頑張る選手の食べ方」についてお伝えしてきたことをまとめると、「食経験が少ないと、成長期での食の改善はとても難しい」ということです。「幼いときの食経験が将来の食生活を彩り、自己管理できるアスリートに」でも書いたように、食経験が乏しいと、「いろいろな食材を受け入れる」ということが苦痛になります。
幼児期から様々な食材を少しずつでも経験し、味覚と胃腸を鍛えて「まず受け入れる」習慣をつけましょう。どんな食材も「なんとか受け入れる」ことができる選手は、食の知識を得ることで、今、自分に何が必要なのかを考えられる選手、自己管理ができる選手に育ちます。
小学校低学年までは、保護者の主導で「健康なからだの土台づくりのために食生活、生活リズムの定着」を進めていくといいでしょう。ある程度の強制力があっていい時期だと思います。
小学生高学年になったら、目標や目的を明確にしましょう。自分の意志でそのスポーツに取り組み、自分をコントロールしていく方法をつかんでいく必要があります。自分の目標のために足りない部分はどこか、自己分析ができるように促していきます。
競技レベルの高い選手は、親元を離れての生活や遠征が続きます。自分で必要な食材を選ぶことができる力があれば、心身の状態にムラがない、安定したパフォーマンスが発揮できる選手になります。ケガの少ない、息の長い選手生活につながっていくはずです。
自己管理ができる選手になるためには、はじめのうちは大人のサポートが必要です。ただ、最初から知識や手段を教えるのではなく、子ども自身がどうなりたいのか、どうしたいのかをしっかりとイメージさせることが大切です。その手順についてお話します。
自己管理できる子どもに育てるために
【準備】
①大きな目標をイメージ
どんな選手になりたいか。オリンピックに出る、日本代表になるなど、現実的でないと思っても否定してはいけません。より高いところをイメージさせましょう。
例えば、「オリンピック」に出たい。という大きな目標でも、「プロサッカー選手になる」「常にレギュラーで活躍する」「ケガをしない」「○○選手のような選手になる」といった目標でも構いません。
②現状把握
今の自分のデータがないとどの努力によってどう変化したかがわかりません。身長、体重、体脂肪量、筋肉量、可能であれば貧血検査などの数値もあるとよいでしょう。「なんとなく」「だいたい」でトレーニングを進めていても 目標達成ができません。食事量、例えばご飯を量ったり、食べたものの写真やメモで記録をして、自分データを数字で「見える化」して、現状を把握しましょう。
【実践】
①「計画」→小さな目標を立てる
大きな目標を達成するためには、どうなっているべきか、何をしていくべきかを具体的に落とし込んでいきます。例えば、身体を大きくする、半年後に5キロ増量したい、そのためにエネルギー量を増やし、質の良い睡眠を取るようにするなどです。
②「実行」→具体的な行動計画を立てる
「なんとなく」「だいたい」でトレーニングを進めていても 目標達成できません。できた、できなかったがわかるように、○×や数字で比較することが大切です。
例えば、普段、ご飯を200g食べているなら毎食250g以上食べる、練習前におにぎりを1つ食べる、体重は毎朝量りカレンダーに記録する、寝る前に30分はスマホを見ない、など可能な限り具体的な行動計画をたてます。
③「確認」→行動計画が実行できたか、目標に近づいているかを確認
食事量を増やすことができているが、増量があまり進まない、体重を毎朝量ることができているが、カレンダーに書き忘れてしまう。寝る前にスマホを30分見ないようにしたら、30分早く眠れるようになったなどです。
④「改善」→さらに目標に近づくために、問題点を改善
例えば、ご飯を毎食250g食べられるようになったので280gに増やす、カレンダーへの記録が面倒だったのでスマホで体重計の数字の写真を撮り記録する、寝る1時間前にお風呂の湯船にゆっくりつかり入眠を促すを追加するなどです。
この「計画(Plan)実行(Do)確認(Check)改善(Act)」を繰り返し、ブラッシュアップしていくのです。私たち大人は、子どもたちが目標に向かって何を行動し、計画し、実行に移していく訓練を、少しずつ身につけられるように支援していきましょう。子どもが自分で気が付くようになったらしめたものです。それを機に、食事面でも生活面でも、自分に必要なものを考えてとっていくようになるでしょう。
今回は、「豚肉とパプリカの黒酢炒め丼」を紹介します。
私がアスレシピに寄稿しはじたのは2018年9月でした。あっという間に6年間もたっていました。小、中学生だった息子たちも大学生となり家を離れ、夫と静かに暮らすだろうと思っておりましたら、急きょ1年前から高校サッカー強豪校の寮母としての業務も加わりました。現在は元気な高校男児たちに囲まれて、食事提供や生活フォローをしております。息子たちよりも若い選手たちのお世話をしているつもりが、こちらが若さとパワーをもらいながら楽しく生活しております。長い間、ありがとうございました。