この夏、毎年行っている私立の中高一貫校の中学ダンス部に栄養セミナーをしてきました。私が関わるようになって今年で5年になります。

保護者にも正しい知識を得てもらう

中学生の課題は毎回、食事量が少ないことです。合宿で全員一緒に食事をすると、指導者にも普段の食事量がよく分かります。合宿中はかなりの運動量になるので、特に指導者は「食べないと練習させられない」と考えますが、しっかり食べさせようと指導すると、保護者から苦情が来ることもあるそうです。

ダンスは審美系競技ということもあり「太りたくない」と故意に食べない選手もいれば、親子共に「ご飯は太る」と思っているケースもあります。朝食も極端に少なく、食べること自体に本人だけでなく保護者もネガティブにとらえている人もいるようでした。

そのため、セミナーには選手は対面で、保護者はオンラインで参加してもらい、食事や補食の意味や役割を親子で理解してもらえるように努めました。親子で理解を深めれば、指導者を含め共通の会話が成り立ちます。

朝食のメリット、質も量も十分に

セミナーでは3食のうち、特に朝食の重要性を伝えました。質も量も、朝からしっかり摂ることで得られることが多くあります。

長時間にわたって集中力が持続し、筋肉をつくる、排便習慣とコンディション管理、朝のタンパク質が入眠をよくする、熱中症のリスクを低減すること等々。メリットはいくつもありますし、朝からエネルギーを摂って動かなくては質の高い練習は望めません。

食べないことが成長期のエネルギー不足(利用可能エネルギー不足)を引き起こし、それにより深刻なスポーツ障害が起こります。今のままでは身長も十分に伸びないまま、止まってしまいます。

成長期のアスリートにとってはどんな種目であってもエネルギー(主に糖質)が必要で、食事だけでとり切れない場合は補食をとります。合宿中も、食事の合間に、主に糖質のパンやおにぎりなどの補食をとるように指導しました。エネルギーの補充だけでなく気分転換にもなっているようです。

5年前、初めてセミナーをした時に中学1、2年生だった選手は高校2、3年生となりました。身長も大きくなり、スラリとしながらもしっかりとしたカラダになっていました。「しっかり食べるようになったから」と指導者も、選手のセミナー後の変化を感慨深く語ってくれました。

先日、神戸で行われた全国大会では過去最高の成績だったそうで「全国大会で戦えるチームになれた」という実感を選手自身も感じたようです。毎年選手が入れ替わる学生スポーツで常に成果を出すのは非常に難しいことですが、食事においても良き伝統をつなげ、着実に進化を遂げているようです。

食事は薬と違い、即効性はありません。しかし、見違えるほど成長した高校生の姿を見て、成長期の数年間の栄養状態は、最終身長に影響するだけではなく、審美系女子の競技力にも大きく影響すると感じました。

今回セミナーを受けた中学生たちが、そんな先輩たちを目標にしっかり食べて練習し、数年先に大きな成果を出してくれますようにと願うばかりです。

今回紹介するのは「シソの実の炊き込みご飯」です。

夏の終わりに大葉(シソ)の花の先にできるシソの実。ピンポイントでこの時期にしか出回らないものです。スーパーや農産物直売所などでこの時期だけ出ていることがあるので、もし見かけたら手を伸ばしてみてください。

今回のシソの実は使用量はわずかですが、βカロテンや葉酸などが含まれます。これはシソの葉と同じような特徴です。

シソの実が少なければ、シソの葉を多くしましょう。これらは栄養的な期待以上にいつもの食事に風味や食感に変化を加える、というご飯のアレンジとなります。

スタイルを気にする審美系女子も、今の時期にしか食べられない「シソの実の炊き込みご飯」をもりもり食べて、良い練習を重ねていきましょう。

管理栄養士・月野和美砂