日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになりました。500年以上前に原型が確立した日本の「伝統的酒造り」は、麹菌という微生物の力を借りて、その土地で育つ作物や気候、風土を生かして作られてきた日本の伝統的な食文化です。
麹を使って米や麦、芋などのでんぷんを糖に分解し、そこでできた糖を酵母の働きでアルコールを発酵させます。酵母はでんぷんのままでは発酵しないため、麹の働きが重要となります。「一こうじ、二酛(もと)、 三造り(仕込み)」という言葉があり、これは「酒造りで大事なのは麹が一番だ」という教えでもあります。
麹から甘味やうま味
麹菌は、でんぷんを糖(ブドウ糖)に分解するアミラーゼや、たんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼなど様々な酵素を生み出し、それによって栄養素が分解されていきます。この麹菌を、蒸した穀物(米、麦、大豆など)に加えて繁殖させたものが麹(米麹、麦麹、豆麹など)で、様々な食品(日本酒、みそ、しょうゆ)が作られています。
麹菌の酵素によって分解された栄養素は、ブドウ糖の甘みやアミノ酸のうま味成分となって、食品の風味を引き出します。肉や魚を塩麴に漬け込むと身が柔らかくなってうま味が増しますし、しょうゆ麹を使うとうま味に加えてコクが増します。カツオや昆布の出汁にみそを溶かしてうま味や風味が増したみそ汁は、シンプルなのにホッとする、日本人にとって欠かせない料理の一つでしょう。
麹が栄養吸収のサポート役に
麹によって、腸内環境の改善や栄養吸収の促進なども期待されます。アスリートのコンディショニングにおいて腸内環境を整えることは重要です。日々のトレーニングでの疲労の蓄積や緊張・興奮などによって、消化吸収能力は低下しがちですが、食事から効率よく栄養素を吸収するために、麹がサポート役になることも期待されています。
日本で伝統的に作られてきたその製法や技術には、現代に生かせる知恵が詰まっています。麹や発酵を日常生活に上手にとりいれて、健康やコンディショニングに生かしましょう。
今回紹介するレシピは「サツマイモの甘酒」です。米で作る甘酒とは違う甘さやビタミンC、食物繊維もとれます。発酵に8時間かかりますが、炊飯器で作れる甘酒のレシピです。
サツマイモのでんぷんが米麹の発酵によって分解されるので、消化がよく糖質補給ができます。そのまま飲んでも、ヨーグルトなどにかけてもよいでしょう。