子どもたちにも人格がある

仁志氏 指導する上でまず大事なのは「子どもたちにも人格がある」と理解すること。子どもなのでできないことはたくさんありますけど、それを大人が否定すべきではない。そして自分が話すだけでなく、子どもたちの話をよく聞いてあげることが重要。しっかり聞いてくれる大人の話は、子どもたちも聞くので。

仁志氏は子供の話を聞く際のポイントとして「口角を上げて聞くこと」と説明した。口角を上げ、笑顔で聞くことが、子どもにも指導者側にも心理的にポジティブな影響を与え、子どもたちから返ってくる言葉にも違いが出てくるという。

あいさつする仁志氏(前)と(後列左から)鹿取氏、定詰氏、坂口氏
あいさつする仁志氏(前)と(後列左から)鹿取氏、定詰氏、坂口氏

指導者が躍起にならない

また、若年層のうちから最高の選手を作ろうと、指導者が躍起にならないほうがいいというアドバイスもした。

仁志氏 一生懸命指導していると最高のものを求めてしまいがち。でも子どもにもできる範囲がある。「だいたいできればいい」「できないことが当たり前」と思って見ているぐらいがちょうどいい。できない時「気にくわない」と思わず、できた時に喜んであげるようにしてほしい。

近年、小、中学生を中心に草の根の野球人口の減少が叫ばれている。ただ、仁志氏は「野球だけやってほしいとは思わない」という。「他のスポーツでもいい。我々にとって重要なのは、子どもたちがどんな大人になるかということ。その中で、野球から先々につながるようなものを見つけてくれれば、たぶん続けてくれると思う」。子どもたちが素晴らしい大人になってくれることを願いながら、侍ジャパンの面々は今後も活動を続けていく。【千葉修宏】

◆侍ジャパン・野球指導者スキルアップ講習会 14年から開催され、実技の講師は、野球日本代表(侍ジャパン)の監督・コーチ・選手経験者が務める。小・中学生の主に軟式野球チームの指導者が対象。基本技術や医学、栄養学の知識を習得し、普段の指導に役立ててもらうことを目的としている。

(2020年3月11日、ニッカンスポーツ・コム掲載)